ISO9001認証取得事例
山形県山形市 山形大学医学部附属病院

2004年2月 ISO9001認証取得

細分化された病院内のシステムをQMS(品質マネジメントシステム)活用で統一。
事故を防ぎ、顧客満足度をあげ、病院経営をスムーズに。

ご協力:
山下 英俊 様 山形大学医学部附属病院長/山形大学医学部副学部長/山形大学教授
細矢 貴亮 様 山形大学医学部放射線医学教室教授/医療安全管理部長

・1年間で2つの認証を取得
認証は、取得よりも活用が重要だということは自明だが、それを存分に達成しているのが、山形大学医学部附属病院である。
同院がISO9001認証を取得したきっかけは、前任の病院長で現在の学部長である嘉山孝正教授が、「この病院がきちんと安全に運営されるシステムを作りたい」と切望したことにある。
その背景には、病院という職場に特有の人事異動の多さがある。つまり、職員にとっては「異動のたびに新しい職場のやり方を習得しなくてはならない」、職場にとっては「異動で新しい職員が入ってくるたびにやり方を教えなくてはならない」という状況があり、そのことが時間と手間の無駄だけでなく、医療の安全性にも影響することを、トップは長い間懸念してきたのである。
嘉山教授はこの問題点に思い切ってメスを入れ、「組織としての行動パターンを確立する」ためのシステムマネジメントを確立することを決断。それを受けて当時の次長がQMSを推薦し、さらにその頃ちょうど取得を検討していた日本医療機能評価機構の「病院機能評価」もあわせて、1年間で2つの認証(認定)を取得。これは日本の大学病院初の快挙であった。
2つの認定を取得した理由は、「病院機能評価」は病院に特化した評価であり、認定を受けることは大変メリットがあるが、5年に一度の再評価であり、それでは日々の品質管理が行き届かないであろうという論議があったためだ。
その部分を、半年に一度の内部審査でカバーできるQMSと併用することが望ましいという結論になり、2つの認定を取得することになったのである。

・全診療科の点滴フォーマットを統一
同病院は、17診療科と、緩和ケア、がんセンター、救急部をもち、604ベッドを有している。
これら20の診療部門が、独自のシステムをもち、それに従って診断や治療を行ってきたのが今までであった。
患者は複数の診療科で治療を受けることも多く、そんな場合、記入システムが違うカルテや処方箋が行き来することに、面倒や不安、不便が感じられた。
医療安全を担保する組織運営を行うこと、組織に問題解決能力を持たせること、即ち企画‐立案‐実行‐検証により刷新していく組織を作ること、人が変わっても運営が変わらない組織を作ることが、嘉山前病院長の構想であり、それを継承するかたちで山下英俊現病院長とISO管理責任者である細矢貴亮医療安全管理部長(放射線医学教室教授)がタッグを組んで、QMSによるシステム構築に取り組んだのである。
たとえば、細矢教授が手がけた点滴指示表のフォーマットの統一は、QMSが多大な成果を上げた一例である。
それまで点滴投薬のフォーマットは科ごとに違っており、そのことがただでさえ複雑な点滴薬剤の調合や投滴にミスをもたらしていた。
幸い大事に至ったケースは発生していなかったものの、取扱者は恒常的にストレスと不安を感じており、早い改善が望まれる案件だった。
細矢教授は、1年をかけて各診療科にヒアリングを行い、病院中の点滴のフォーマットを一つにすることに
成功した。ヒアリングをした結果に基づいて手順書を作り、その有為性を実験にかけて図り、最終的にはどの診療科でも使える合理的なフォーマットにまとめあげたのである。
その結果、点滴ミスは画期的に減少した。またこのフォーマットの統一は、病院にありがちな激しい人事異動にも役立った。というのは、新しい診療科に配属された場合でも、使う点滴フォーマットは同じなので、ミスを起こしにくくなったからである。
また、それまでは医局によってバラバラだった薬の振り分け方法も、ある病棟で行われていた合理的でミスの少ない方法を採択し、それに統一されることになった。
これらの具体的な改革の成果によって、QMSによるシステムの有効性が明確になったこともあり、QMSはスタッフに大きな信頼を得た。そして今や「医療安全」が、同病院の一つの文化となりつつある。それにともない、ボトムアップでさまざまな提案も出てくるようになり、「QMSが軸となって、PDCAがいろいろな部署で早く良く回っていると感じる」(細矢教授)という理想的な状況ができている。
あがってきた問題点は、問題ごとにワーキンググループが作られて、そこで解決策(システム)の原案が作成され、医療安全管理部会で承認されると、解決策が決定事項として発表される仕組みになっている。つまり、ものごとの原点は「現場から問題が上がってくるか否か」にあるのであり、そこが沈黙していると、問題は浮上せず解決もしないが、現在、同病院ではそこが非常にスムーズにまた積極的に活動しているというわけだ。
ちなみに、現在、最重要テーマとして研究が進められているのが、電子カルテ化であり、これも実現の目処が立ちはじめているという。

・病院教職員の意識改革
QMSの導入は、意識面でも改善をもたらした。
それは、「スタッフに、他の診療科や病院全体を見る姿勢や傾向が出てきた」ことである。それまでは、各部門のスタッフは、自分の仕事や診療科を完璧にすればそれでOKだという感じだったが、QMSの導入後は他との関連を見、その関係論の中で物事を考えたり対処したりしようとするようになっている。それはすなわち、病院が一つにまとまる兆候であり、当初に嘉山前病院長が望み、そのためにISO9001認証取得を目指した目的にまさにかなうものである。そして「スタッフが、各所での問題点と大局での問題点を関連付けて考えるようになったことで、この後さらにさまざまなアイデアや解決策が示されることが期待できそうだ」と山下病院長は言う。
もちろん、上層部もボトムアップだけを期待していることはない。細矢教授は、春と秋の2回、医局長と病棟医長にヒアリングを行い、積極的に問題点の抽出を行っている。そのときに必ず病院の今の経営状況を話し、その上にたったヒアリングやディスカッションを行っている。
また、患者に対する満足度調査を実施。その結果、食事に対する不満と、対応の良くない医師への不満があることが判明し、それらに対して食事の品数を増やしたり、1回の食事におけるメニュー(取り合わせ)の見直しなどの対応策が講じられた。
また、山形大学医学部には、従業員としての教職員や患者さんのためにと嘉山学部長の尽力によりコンビニエンスストア、ドトールコーヒーがオープンしている。これらは、教職員の意識向上に役立ち、今後の病院機能向上に役立つと考えられる。さらに、飯田キャンパス内に保育所の開設を予定しているが、これは女医の退職防止および確保のためのものだ。「これで安定的な女医さんの確保ができ、なおかつ安心して勤務してもらえるなら、病院としては願ってもないことだ」と細矢教授は言う。こうした施策は、教職員の働く満足度を向上させ、患者さんの満足を得られる医療提供を目指す病院の実現の大きな推進力となり、QMSで評価される患者満足度をさらに上げることが期待できる。

・「救急の山形大学病院」を支えるQMSの考え方
同病院では、今、大学病院の経営について真剣かつ深刻に考えている。そして生き残り策として重要視しているのは、「性格づけをはっきりすること」だという。ただ規模が大きく何でも診るだけの大学病院ではなく、「あそこに行けば、これは間違いない」というポイントをはっきりさせて、そのクオリティーを優先的にあげていくことを目指しているのだ。
同病院の場合は、その柱は、「教育」「高度先進医療」「救急救命医療」の3本である。そして、この分野で評価を得る病院になることを目指すからこそ、QMSを使った組織運営を構成員の1人1人が理解し、主体的に働くことの重要性をさらに強く感じているという。
一刻一秒と施術の正確さを争う救急救命医療や、高度な技術を普遍化して駆使しなくてはならない高度先進医療の現場で、QMSで評価し、イノベートされる組織運営が構築されているか否かでは、結果にも大きな違いが出てくることは想像に難くない。
今後このようにQMSを利用することでさらに血となり肉となれば、おそらく「救急救命医療の山形大学病院」と評価されるだろう。そしてそのことは、今、大病院が頭を悩ませている、研修医の確保にも良い影響を及ぼすことだろう。
「大学病院もつぶれる時代です。しかし地域に高度な先進医療を提供するためにも、この病院は残る義務があります。QMSはそのためのガイダンスのようなものではないでしょうか」と山下病院長。地域医療を担う大学病院の責務は重い。その責務をまっとうするために同病院で着々と進んでいるシステム改革。そして、これらの取り組みの底流にあるのは、QMSの本質をついていて、何のため、誰のためのISO9001認証取得かということを再認識させた審査員のコメントだったという。「それが原点であり到達点だと思っています」と細矢教授は言う。

IN SCOPE JAPAN Vol.21(2006年8月発行)より

 

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