審査員コラム
「品質マネジメントシステムの形骸化しやすい3大要求事項」連載第2回

ISO9001/ISO22301主任審査員 ISO13485審査員 相川 敦

2015/6/19up

ISO9001における形骸化しやすい3つの要求事項と形骸化の要因、そして
規格の本来の意図に関する考察を、筆者の審査経験をベースに深めます。(隔週金曜日掲載)


品質マネジメントシステムの形骸化しやすい3大要求事項 | ISO認証機関 ビューローベリタス
審査の現場において、多くの組織で形骸化していたり、ISO9001(以下、規格)に適合した運用が窮屈になっていると感じられる3つの要求事項、その1つは「文書の承認」(ISO9001:2008 4.2.3)です。

規格4.2.3のa)およびb)では、次のようにあります。

a)発行前に、適切かどうかの観点から文書を承認する。
b)文書をレビューする。また、必要に応じて更新し、再承認する。
(JIS Q 9001:2008から引用)

つまり、文書を作成および更新した時はその文書を承認しなさいということです。

この要求事項に関し、審査の際に次のような質問をいただくことがあります。
「手順書の一部を変更しただけでも、表紙に承認印をもらわなければならないのですか?」
この質問に対する回答は「みなさんのルールがそうなっていれば、その通りです」になります。

また、現場の作業手順が変更されて一定期間を経過しているのに該当する手順書が更新されていない、あるいは更新されているのに承認を受けていないという事例を目にすることもあります。その際には、なぜそのような事態になっているのか質問することが多いのですが、次のような返答をいただくことがあります。
「手順書を変更すると、文書の確認印や承認印をもらったりする必要があり、手間がかかるのでつい後回しにしてしまっていた。」

いずれの事例でも承認印をもらうことが大変だ、面倒だ、と受けとめられているようです。さらには「規格が要求しているからやらなくてはならない、ISO9001は面倒だ」と捉えているように感じることもあります。その結果、「年に1回とかある程度変更点がまとまってから文書変更の稟議を上げよう。それで規格の要求は充たせるだろう」という考えにつながっていることもあります。皆さんの組織ではどうでしょうか。

これでは、ISO9001認証の取得・維持を目的に、規格の要求事項の充足が焦点となり、形をなんとか整えておくだけになりかねません。つまり形骸化です。

ここで規格の要求事項をもう一度読んでみましょう。規格が言っているのは、文書を承認または再承認しなさいということだけです。表紙に承認印を押しなさいとか上層部による承認を受けなさいとは決して言っていません。文書の承認印を受けるのが面倒だったとしても、その承認手順を定めたのはあくまでも皆さんの組織なのです。

では、規格が文書の承認を求める意図は何なのでしょうか。

それは「組織内の権限を持つ人が文書を承認することで、その文書に書かれた内容を組織の正式なものとして位置付けなさい」ということだと捉えればよいと思います。文書の承認方法や承認された事実を確認する手段は何でも構いません。大事なのは、それを組織の正式なものとして位置付けるということなのです。

「文書を組織の正式なものとして位置付ける」とは、その文書に書かれたルールや手順で業務を実施している限り、それは組織が認めた通りの業務になっているということです。逆に言うと、承認された文書の内容と異なる手順で業務を実施している場合は、それは組織が認めたものではないということになります。経営者から見れば「現場でそんな手順が採用されているとは知らなかった。承認された文書の通りに業務を行っていると思っていた」という認識になるでしょう。

つまり、各現場でルールや手順を変更した場合、たとえそれが改善を目的とした前向きな変更であっても、該当する文書に反映し承認を受けない限り組織の正式なルール・手順からの逸脱となるのです。だからこそ各現場にとっては、自分たちの改善を速やかに組織の正式なルール・手順に位置づけることが重要であり、そのために文書の承認・再承認を迅速に実施する必要があるのです。

さて、規格には文書の承認者を誰にすべきかという要求事項はありません。また文書が承認された事実をどのように明確にすべきかという点についても、具体的な要求はありません。誰が文書を承認するかも、どのように承認するかも自由に決定して良いのです。常に管理された状態で業務が実施されている状態を維持する上で、現場のルール・手順が常時組織に承認された状態を保てるよう、文書承認権限を委譲したり、文書承認方法を工夫したりするなど、文書管理プロセスの見直しが肝要です。

連載第3回(7月3日掲載予定)では形骸化しやすい要求事項の2つ目として「教育・訓練の有効性の評価」を取り上げ、形骸化の要因、そして規格の本来の意図に関する考察を深めます。

(続く/本連載は隔週金曜日に掲載します)
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