審査員コラム
「品質目標の効果的運用のヒント」

ISO9001主任審査員 権田 和弘

2015/8/7up

ISOの審査員として、数多くの組織における品質目標の取り組みを目にしてきました。
品質目標を組織・部署の活動に合わせて適切に運用するケースがある一方、
ISO認証維持のために「とりあえず」品質目標を設定し、活動については
結果オーライの運用をしているケースなど、様々な状況が見られました。
そこで品質目標の展開及び効果的運用のヒントになればと、審査を担当したある組織の
お取り組みを紹介します。(注:本文に登場する組織及び個人の名称は仮のものです)


先日、久しぶりにISO9001の審査に伺った田中工業は、品質目標の活動を通して多くの課題を解決していく組織へと変貌を遂げていました。

3年前、同社は50名規模の家電製品の部品メーカーとして、現在の2代目・田中社長が先代から引き継いで3年が経過した状況でした。
先代社長の現役時代にISO9001認証を取得していましたが、3年前の状況はというと、品質目標と目標値が定められていたもの、具体的な取り組みは場当たり的に実施し、結果が出てから評価を行うといった内容でした。
田中社長は社長就任以来、製造及び品質保証の部門長も兼務し、がむしゃらに働いていました。先天的な感もあって、具体的な取り組みは全て彼の頭の中で考え、実行に移し、それなりの成果を挙げてきていたのです。

人に任せる
しかし組織が大きくなるに従い、社長業に専任しなくてはならない状況となりました。そこで田中社長は、相談したコンサルタントより受けた「若い人に任せなさい。力量不足と思うかもしれないが、人は任せられると隠れていた力を発揮するものですよ」というアドバイスを早速実行に移したのです。製造部門を任せられた鈴木さん、品質保証部門を任せられた斉藤さんは共に意欲に満ちていました。

品質目標の効果的運用のヒント | ISO認証機関 ビューローベリタス
目標値の設定
その年の部門品質目標は、従来の目標項目については継続し、目標値のみを高く設定とする内容でした。しかし、前年の活動展開状況が共有されていなかったため、鈴木・斉藤の両部長は不明点が出るたびに田中社長への確認が必要となり、さらに社長が全てを記憶していなかったため、中途半端な状態での取り組みとなったのです。結果は散々なものでした。
翌年の品質目標の設定の際に、両部長は昨年の失敗を改善につなげることを社長に提案しました。そして3人で、品質目標を達成するためにどのような活動を展開してきたか、その成果はどうだったのか、を振り返りながら具体的に記録したのです。
この記録を基に、両部長はその年の品質目標、及び目標達成のための具体的な活動を設定しました。

しかしここで再び問題が発生しました。品質目標の一部の項目において、達成値を設定できないことに気づいたのです。検討した結果、それら一部の項目については、具体的な施策の各項目別に達成値を設定し、それらを達成したか否かを評価することになりました。この手法であれば、品質目標の達成度が明確になると判断したのです。

品質目標項目の達成値については、別にも頭を抱える問題がありました。作業発生数がふたを開けてみないと判らないケースです。例えば、「作業マニュアルの作成:目標XX件」と設定したくとも、作業マニュアル作成が必要な案件が1年間に何件発生するのか判らないため数値を設定しようがない、と一見思われます。
そこで両部長は考えました。逆の考え方をすれば良いのではないかと。結果、新規作業項目の発生に伴い作業マニュアル作成が必要となった件数に対する、「未作成」件数を目標値とすれば良いとなりました。これなら「作業マニュアルの未作成:0件」と設定できます。「必要な作業マニュアルは全て作成しなければならない」という社内ルールに基づき、未作成の状況で作業が実施された時に「未達成1件」とカウントするようにしたのです。

また、それまで品質目標項目として「製品勉強会の開催:年6回」と設定し、実施していたことについても2人は話し合いました。「製品勉強会の開催」そのものが目標となっていて、開催すれば達成となるのは何かを履き違えていないか、と思ったのです。
そうなのです。「製品勉強会の開催」は何かを達成するための手段ではないでしょうか。ここではむしろ「製品知識の習得」が目標ではないでしょうか。
製品知識の習得のためには、製品勉強会や展示会参加など様々な手段があります。そこで両部長は、新たに「製品知識の習得:6製品/年」と目標を新たに設定しました。そして、前回の勉強会の内容について習得度を問う質問を行い、正解度で達成度を判断・評価することにしたのです。不正解が多ければ同じ製品の勉強会を再度行えば良いのです。

目標達成に向けた具体的な施策
品質目標の効果的運用のヒント | ISO認証機関 ビューローベリタス
続いて両部長は、従来の「XX年度品質目標実行計画書兼実績表」の様式を変更し、品質目標項目と達成値、それを達成させるための具体的な施策と達成値が一覧で確認できるものへと変更しました。つまり、1つの品質目標項目に対して複数の具体的施策を立案し、具体的施策にも目標値を設定したのです。
これにより、品質目標項目が未達成の場合、どの具体的な施策が十分でなかったかを識別しやすくなります。「具体的な施策項目を全て達成しているが、メインである品質目標項目は未達成」というケースであれば、具体的施策の項目が不足していると判断できます。
計画と実績を一目で確認できるこの新しい様式により、課題や現況について、自部門だけでなく他部門や社長との間で共有することが可能となりました。

達成状況のフォローとマイルストーンの設定
以前は品質目標の実績月次報告を品質委員会で行い、未達成の場合は翌月のリカバリープランを口頭で説明していましたが、これらもこの新しい一覧表に記入することになりました。それにより翌月の活動状況が社内で共有され、別部門の従業員の目線による提案などが出されるようになったのです。

しかし問題はまだ残っていました。毎月の実績値が年間の目標値に対して、達成状況にあるのか未達成状況なのかが判りません。そこで年間目標値から算出した毎月の目標値が設定されました。これはマイルストーンと呼ばれ、途中経過での目標値(到達値)です。
このマイルストーンの設定には大きく2通りの方法があります。1つは、年間の目標値を単純に12等分して月々の目標値とするケース。もう1つは、年間の目標値を基準とし、過去の月々の変動値を参考に毎月異なる数値を設定する方法です。各組織・部門にとってどちらが評価し易いかを考えて選択するのが望ましいでしょう。

品質目標の効果的運用のヒント | ISO認証機関 ビューローベリタス
最後に
このように従来の品質目標の仕組みを見直した結果、同社のマネジメントシステムの有効性は向上したようです。未達成の項目があるものの、取り組みの方向性が明確となり、具体的に展開されています。
二人の部門長は、経営者が頭の中で考えて実行していたことを、誰にでも見て判る方法へと変えることにより、品質目標に向けた活動に取り組みやすくしました。

皆さんの組織や部門ではいかがでしょうか。今回紹介したこの方法が、お取り組みの改善・強化の参考となれば幸いです。

(注:本文に登場する組織及び個人の名称は仮のものです)
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