審査員コラム
審査におけるサンプリングについて

マネジメントシステムテクニカル部 部長 景井 和彦
テクニカル部 主任審査員 林 重樹

2017/7/10up

ISO9001/ISO14001 2015年版への移行に向けた受審組織の事前準備 | ISO認証機関 ビューローベリタス

審査において、エビデンスを確認するときに組織の業務の全件を確認することは時間的にも非現実的であるため、サンプリングという方法を使って審査の俎上に載せます。
サンプリングされたエビデンスを起点に、ルール通りの運用であるか否か、問題があればそのエビデンスに紐付いたエビデンスを、連続性を持ってルール・基準と対比しながら適切か否かを判定していくのが審査における通常の活動です。その途上でルール・基準からの逸脱があれば、不適合の判定を出すことにつながります。

サンプリングという方法を使って審査を行う以上、サンプリングしたエビデンスから得られる姿が全体の姿をいかに正しく表しているか、ということが審査全体の正しい評価につながります。
したがって、サンプリングの方法選択には全体の姿を正しく代表する理由や根拠が重要です。

サンプリングの方法は大きく分けてA) 「ランダム」(無作為)で行うものと、B) ある意図を持って該当する条件を絞り、その中から拾い上げるものがあると考えられます。

A)
ランダムで行う方法は、複数の案件が均質で、それをランダム(無作為)にサンプリングしても母集団を偏りなく代表できるだろうと判断される場合に利用します。

B)
もうひとつは、該当する条件(案件の難易度、案件の規模の大小、案件の処理時間の長短、使う材料の多寡など)を指定して絞り、その中から拾い上げる方法で、審査対象のマネジメントシステムの負荷や役割を代表できるように選びます。各案件の特徴や条件にばらつきがあり、何らかの属性でサブグルーピングを行ったうえでサンプリングを行う場合です。
これは、組織のシステムを評価するにあたって、過去に審査の経緯がある場合が通常なので、それまでに検出された弱みや、課題に着目して(サブグルーピングして)サンプリングを行い、改善状況を評価することも有効と考えられます。
サンプリングの方法はいろいろありますが、すべて審査員の審査方針によって選択され、より適切な審査結果になることが審査のあるべき姿であり、審査員の責任範疇であると考えられます。

ここで、上に述べた内容を前提に、審査における具体的なサンプリングの良い事例と悪い事例を考えてみたいと思います。


【良い事例】

量産の自社製品を持つ電子部品製造組織を例に挙げます。
製品分類として、通常、
@ 全くの新規製品
A 過去に製造した製品を改良した製品
B 既存製品の増産
が考えられます。

こういうケースの着目点として@ABの製造占有率を聞いて、一番多いものと一番少ないものからサンプリングするとします。Bが一番多いとすると、日常に製造されているものにおいて適切に手順通りの作業が行われているか(慣れによって実質的に無駄な作業が飛ばされていたりすることがある)を審査します。また、@はほとんど製造されないとすると、工程設計を含めた設計からの指示が的確に製造ラインに反映され、その手順通りに作業され、意図通りの結果が得られているかを確認します。
このようなサンプリング意図によって、既存製品のラインについては作業が適切で手順どおりであるか、新規製品についてはラインの変更に的確に対応できているかを見極めたと言い切る根拠を得ることになります。

【場合により良くない事例】

業態は問いませんが、審査途上で不適合やクレームなどの状況を確認し、問題が多い製品、その原因となる工程や部署がある程度特定できる情報を得たにも関わらず、それ以外のあまり問題のない製品やラインをサンプリングしてしまうと、その組織が抱える課題を見なかったことにもつながると考えられます。もちろん、現状問題がないとする部分に、本当に問題がないかどうかを確認するリスク予知的な意図が否定されるわけではありませんが、審査途上で問題が出ている部分がわかっている状態ではその部分を優先的に見て、その組織が持っている問題発生から解決のプロセスを確認する意図をもって審査を行う方が、マネジメントシステムの健全性を確認するうえで一般的に正しいと考えられます。

【良くない事例】

良くないサンプリング事例は、審査現場で「何か事例を出してください」とサンプリングそのものを組織にゆだねてしまうことです。審査をしていないとまではいえませんが、こういう場合は、組織が意図的に適切性を装った事例を出してきて、「よく出来ていますね。問題ありません。」という評価結果に終わりがちです。組織のマネジメントシステムの正しい姿が見えないばかりか、問題となる部分の確認も出来ないため、極論すれば「審査の信頼性がない」、あるいは「審査をしていない」という言い方につながることが考えられます。たまには、組織が大丈夫と選んだにもかかわらず不適合がある場合もありますが、これも審査手法としてお勧めできません。


審査現場で組織の該当する案件の全部が確認出来ない以上、サンプリングはマネジメントシステムの審査ではもれなく使われる手法なので、その方法が審査の信頼性に大きく影響することを審査員は自らの責任として強く認識することが必要と考えられます。

受審する組織は、審査員が何を考えてサンプリングを行うかについてあまり考える必要はありません。受審組織の業務区分をご説明いただき、その上で審査員がサンプリングを行う区分を考えます。当然、上記のAとBの区分がありますから、なるべく組織の活動の全体像をご説明いただきたいと思います。頻度の多寡、保証特性や製品・サービスへの影響の大小、事業規模の大小、設計や製品の新旧、業務担当者の業務経歴の長短、プロセスのパフォーマンスのトレンド(上昇、下降、一定)などを含めていただけると、審査員のサンプリングがより有効になると思います。

 

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