審査員座談会「ISO9001・ISO14001 認証範囲と適用範囲」

その2〜EMS審査の実例から

2017/11/2up

日時:2017年6月26日(火) 15:00〜
出席者:審査員A(進行役)、審査員B、審査員C、審査員D

※本文中の用語について、下記のように表記します。
ISO14001(環境マネジメントシステム)=EMS
ISO9001(品質マネジメントシステム)=QMS

審査員A:
今、座談会の場ということでちょっとフレキシブルな議論でいいので、経験的に不適合を出す基準みたいなものがあれば出していただきたい。 例えば、1つの会社が分割して、一方に環境負荷の高いものがあるにもかかわらず、全く管理されていないし、適用範囲にも入っていない、だから不適合を出した、というような。可能性としてでもいいです。今後ははっきりさせないといけないような事例。チェリーピッキング(「リスク飛ばし」)は認められないという大原則です。

ケースA


審査員B:
ISO14001 ケースA

(図3)

Cn、Fa、Vaという3つの事業部と、共通の総務のような部門のある会社の例です(ケースA, 図3)。
EMSは最初にビューローベリタスから認証を受けたときは全体で受けたんです。このうち、Fa事業部(@)が外資系企業に売られました。その時点で、独立して認証書を取得しようということにしたんです。
審査員A:
なるほどね。オーナーシップが変わったから。
審査員B:
そう。排水処理施設などはBにあって、全部共有なんです。
廃棄物もCにあって、総務部門が全部まとめてやってくれてるんですよ。でも、@だけ独立してしまったので、改めてビューローベリタスの審査を受けることになりました。@の中でマネジメントシステムを作って、排水、廃棄物などはインターフェースがありますよという仕組みにしました。幸いなことに残った事業部もビューローベリタスで認証取得しているので、当時は各組織で認証という形をしていました。
廃棄物に関しては、元会社のルールに従って@が実施するんですよね。排水も、@から出る水は元会社のほうの環境マネジメントシステム認証下で管理されていて、その排水状況は@にフィードバックされ管理されているということで認証しました。もちろん、@とは別でビューローベリタスの認証を受けているBではリリースポイントでの管理を行っていたので、安心感はあります。
審査員A:

このケースでは、所有権が変わろうと変わるまいとこの敷地の中で管理が「閉じて」いるんですね。

審査員B:
そうです。
審査員A:
だけど、今おっしゃったようなCn、Fa、Vaが分かれたケースでも、どこかがEMSを取得していないと、一元化されているはずの管理に抜けが生じるということです。つまり、この敷地の中で、@だけ、Aだけでは「閉じない」というわけでしょう。だからどの事業部が独立したとしても、この元会社全体の中での管理と組み合わせてはじめて閉じるんです。となると、この敷地の中で管理が完結する前提で、敷地内にあるところは認証に入れないと駄目でしょうという話に聞こえる。
審査員B:
閉じています。閉じているから、もちろんこの敷地から排水は外に出ます。それは元会社に委託している形になるということ。ただ、元会社のルールは@が守りますよということです。
ただ、こういう場合も、独立したほうもちゃんと管理ができていないと、ここだけで認証というのは難しいかなという話はあるかもしれません。
審査員C:
ここだけを認証の範囲とする場合の考え方として―チェリーピッキングであるかどうかの見極めは別途必要ですが―その認証範囲のEMSとして環境方針があり、その中では、その範囲の環境側面となるイン/アウト、影響が及ぼせる側面などすべてについて順守義務、評価、改善活動などを含めて管理すると謳っているはず。管理すべき順守義務そのものが直接法規制そのままの基準かどうかは敷地の構造や施設の構造によって、敷地全体として法を守るためにその範囲では自主基準などの形をとる場合もある。そういうことを考慮して、認証範囲外にある排水処理施設に流すまでの認証範囲内で自主基準などを設けて管理されていなければ方針に書いたことが満たされていないことにもつながってしまうので、その範囲の環境側面となるイン/アウト、影響が及ぼせる側面などすべてについて順守義務、評価、改善などを含めて管理できていることが最低限の条件になるのではないかな。

ケースB


審査員C:
ISO14001 ケースB

(図4)

7、8年前に審査をした事例に似たような話があった(ケースB, 図4)。敷地の中に別会社があって、@にE社のプラント、Aに別会社F社のプラントがあって、なんとF社のプラントの中に全敷地の排水処理設備があるケース。昔は1つの会社だったんだけど。
そのときは、排水処理施設の能力をきちんと勘案して、自分たちがどれだけの排水量を出していいかを判断していないという不適合を出したと思う。排水処理施設の能力と、自分たちの排水可能量を何も把握してないままで、ここはお任せですからうちは環境側面としては捉えていませんという話になったときに、「これは管理対象です」と言った覚えがある。E社がF社のキャパシティーをきちんと押さえた上での排水可能量について「そんなこと考えたこともありません」という回答で不適合にした。
審査員A:
それはE社側の管理範囲外にあることによって、仕組みが崩壊しているというかリスクがある。
審査員C:
そう。リスクとしてはね。未処理のまま外に出してしまう可能性があるでしょう、そこを押さえていないと不適合ですよと話した。
審査員A:
だけど、この場合、@の範囲でも認証取れるんだよね。
審査員C:
そうだよ。認証は@の範囲。一応Aの土地を含めた認証だったんだけどね。F社に土地を貸していたから。
審査員A:
貸していたのだったら、なおさら知らなかったとは言えないね。@の認証としても、今はデータをもらわないと駄目な気がする。
審査員C:
もしAの土地が自分たちの土地でなくて、本当に委託しているだけだったら…それでもやっぱり流量だけは押さえてくれという話は出ると思う。運用管理のところで。
審査員B:
排水処理施設の所有者がF社なのであれば、要求事項というのが普通、処理を行っているF社から来るよね。うちへの流入はこれだけにしてくれとか、pHや対応はこういうふうにしてくれとか。
審査員D:

流量とか、そういったことは、別会社でなくても公共で要求が来るよね。

審査員A:
賃貸のビルに入っている事務所もそのビルの方針に従うのが前提ですよね。そう思うと、借主が貸主の要求に従うのであれば問題ないでしょ。
審査員D:
だから多分、土地の所有者が借主の仕事を管理していないというのは不適合でいいと思うな。
審査員B:
そうすると、F社の排水処理施設というのは影響を及ぼすことができる側面として捉えるしかないよな。
審査員C:
そうなんだよ。だから、本来は流量は1日何㎥にしてくれとか、決めごとの中で約束を守っていればいいんだけど、そのケースでは一切なかったんだよ。
審査員B:
影響を及ぼすことができる環境側面として、今後、排水処理施設を挙げて、流量や濃度などについての決め事も管理対象としないといけないね…
審査員C:
たとえば工業団地の場合はそのあたりはちゃんと協定かなにかで決まっているけど、大抵は極めて曖昧な契約なんだよ。もともと同じ会社だったりして。
審査員A:
箇条4.3の適用範囲の決定については、こういう物理的な境界を含め、図に描いて検討をしなければなりません。物理的境界が決まったら、その物理的境界の中にある全ての活動というふうに読めば具体的ですね。だから、この物理的境界の中で「閉じて」いれば、最低限、組織単位とか企業による活動、製品サービスに絞ることができるようになるんでしょうかね?

ケースC


審査員D:
ISO14001 ケースC

(図5)

稀なケースかもしれませんが、こういう敷地(ケースC, 図5)があって、昔は建屋がたくさんあったんだけど、私が審査した頃は@だけだったんです。で、彼らはここだけが認証範囲だと。理由は、他は建屋の中の設備も何もかも残っているけれど要らなくなってしまったと。
審査員B:
要らなくなっても、やっぱり環境側面ですよね…
審査員D:
そうなんですよね。それで、使わなくなった建屋を見せてほしいと言ったら、もう古いから中には入れなくなっているということでした。これも適用範囲でしょうと私は主張しましたが、組織側は@しか活動していないから適用範囲は@だけだと。
審査員B:
それは違う気がする。
審査員A:
活動は@かもしれないけど、組織が持っている物理的境界はA全体が含まれているわけでしょ。人は誰もいないけど閉山した鉱山が管理対象とか、ごみの置き場所が管理対象であったりしますよね。だから、それは立派な管理対象、物理的なエリアの中じゃないですか。
審査員D:
管理が及んでいる境界という言い方をしたときに、ケースA(図3)の例でも、1箇所しかないゴミ捨て場所や電気を各社で共有していて、1社の廃棄量や使用量をちゃんと把握できるのか、できないなら管理できないじゃないかとコンサルタントに言われていましたね。
審査員A:
一元化しろと。
審査員D:
そうそう。だから全体で取らなきゃ駄目なんだと。
審査員A:
まあ一理ありますけどね。ケースAだと元会社の一元管理になっているという話ですよね。
審査員D:
ただ、この中の1箇所でごみの削減をやりますといったときに、その1箇所の廃棄量が分かるのかという話です。そこでごみの量がきちんと把握できていればいいけれど、その敷地全体の量でしか分からないのであれば、それは管理していないでしょうと。
審査員B:
出すときに重さを測っていればいいですよね。
審査員D:
ただ現実は、絶対的な量というのは実際には把握しにくいので、今あるものから何分の1とか、数値化できれば、それは管理しているといえる。
審査員B:
大体、面積比か頭数で按分ですよね。
審査員D:
結局、何かしらの数値を出してくれと。さっきのケースBの話もそうなんだけど、排出している量を、絶対値であろうが換算値であろうが、数値で言えるかどうかだよね。
審査員A:
ケースB(図4)は組織単位と整合性がない話でしょ。ケースAは組織単位と整合性があって、組織の長が責任を持っている範囲なはずなんですよ。ケースCは、A全体を知らないとマネジメントできるわけないでしょというのがポイントだったんだよね。だから、組織単位と機能および物理的境界というのは、土地単位ということだけでは決めにくいということ。だからケースBも、物理的境界の話にすると、組織の単位というのは責任と権限がカバーできる範囲だと思っていいと思うんだけど、認証範囲の中に物理的境界も含まれているとすれば、それはそれでちゃんと文書化しないといけない。ケースCについてはマニュアルがある前提で言うと、どこの場所が入るか、弊組織はこのように考える、ということをマニュアルの中に宣言してくれという感じがするんだけどね。社会的責任を果たすために敷地の全てを適用範囲とするのか、適用範囲はここだけ、認証範囲はこうだ、と2行書いて、マニュアルを対外的に出すようにすれば、一番整っていると思うんだけど。
審査員B:
それが一番いいと思います。
審査員A:
不適合を書こうと思ったら基準を明確にして、対外的に出す。これも組織が果たさなくてはいけない責任ではないかと。
審査員B:
環境側面を抽出するという話がAPPENDIX6.1.2にあります。附属書の説明の中では、環境側面を決定するにあたっては、現在および関連する過去の活動を環境側面として入れるということが書いてあるので、過去に使っていた建物や物は、やっぱり入れる必要があるんだろうなと思っています。昔ここに工場があって、そこにもしかしたらアスベストが入ってるかもしれないとかね。
過去の活動といえば、僕らがよく気になっているのが、昔の会社というのはポリプロエチレンなんかを普通に流していたはずなんですよ。そういうことも含まれているのかもしれない。過去の活動に関わる環境側面にも対応しなくてはいけない、ということを考えると、ケースCではやっぱり使わなくなった建屋も適用範囲に入れなくてはいけないと思う。




 

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