規格解説
航空宇宙品質マネジメントシステムの動向(AS/EN/JIS Q 9100シリーズ規格)
〜JIS Q 9100:2016改正版について

システム認証事業本部 主任審査員 寺尾 博
(JRCA登録 AS産業経験審査員)

2017/5/26up


航空・宇宙・防衛品質マネジメントシステム(AQMS)規格であるJIS Q 9100:2016改正版が2016年9月20日に発行されました。その概要について説明します。

1. 9100:2016 の主な改正点


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9100:2016 規格の今回の改正において変更又は強化された主な事項は次のとおりです。 これらの事項は、9100規格の要求事項をより明確にするためのものであり、要求事項の意図を変更するものではないことに注意する必要があります。

なお、IAQGでは、9100 規格の改正版の展開を円滑にすること、および改正版の趣旨を容易に理解してもらうことを目的に、展開支援文書を作成し、IAQGのホームページに掲載しています。これらの展開支援文書は、日本語に翻訳されJAQGのホームページでJAQGメンバーに公開されています。

(1) 運用リスクマネジメント
8.1.1 で、箇条8の運用プロセスに関連するリスクに限定し、リスクマネジメントを適用することを要求しています。また、その適用を明確にするため、8.1.1 のタイトルは、“運用リスクマネジメント”とされました。

なお、要求事項は本質的には変更されておらず、

  • プロジェクトマネジメントの活動などで責任を割当
  • リスクを特定(例えば“発“生確率”と“起こり得る好ましくない結果(影響の程度)”との組合せによりアセスメントを行う)
  • 組織内において(又は必要な場合には顧客を含む関係者とのコミュニケーションによって)合意し、決定した基準を超えるリスクの特定と受容基準までの低減
  • 残留リスクが受容可能かどうかを判断

までの一連のプロセスが求められています。

(2) 製品安全
新たに“product safety”(製品安全)の定義および8.1.3 として要求事項が追加され、製品ライフサイクル全体を通して製品安全を保証するために必要なプロセスと活動が求められています。8.1.3 の注記には活動の事例として、ハザードの評価および関連するリスクのマネジメント(FMEA、安全分析、安全に係わるリスクマネジメント)、発生した事象の安全性への影響分析および(組織内・顧客・監督官庁等への)報告、それらの事象の伝達および人々の訓練(安全文化の醸成促進)が示されています。

(3) 模倣品の防止
新たに“counterfeit part”(模倣品)の定義および8.1.4 として要求事項が追加されました。この定義では、模倣品又は模倣品の疑いのある製品の使用、およびそれらが顧客へ納入する製品に混入することを防止するプロセスと活動が求められています。8.1.4 の注記には考慮することが望ましい事項が示されています。

(4) 認識についての要求事項
組織の管理下で働く人々の認識に関する要求事項をより強固なものとするため、7.3(認識)に“製品又はサービスの適合に対する自らの貢献”、“製品安全に対する自らの貢献”および“倫理的行動の重要性”の3 項目が追加要求とされています。また,8.4.3(外部提供者に対する情報)においても、同様の追加要求事項があり、外部提供者へ伝達(フローダウン)することが求められています。

(5) 形態管理(コンフィギュレーションマネジメント)
8.1.2[形態管理(コンフィギュレーションマネジメント)]は、JIS Q 9100:2009では7.1.3 として、関連規格であるISO 10007を基に5つの項目が追加されていましたが、今回の改正では要求事項が更に明確化され、多くの組織に適用可能な要求事項へ変更されました。

(6) 運用の計画および管理についての要求事項
JIS Q 9100:2009年版で追加された“プロジェクトマネジメント”および“作業移管の管理”は細分箇条としては置かれていませんが、8.1(運用の計画および管理)の下に要求事項が移動されました。

(7) 外部から提供されるプロセス、製品およびサービスの管理についての要求事項8.4.1 では、組織に対して外部提供者がその直接および下請(sub-tier)の外部提供者へ適切な管理を適用することが求められています。直接契約の有無および組織間の関係性を考慮し、適切な管理には、直接的又は間接的な手法を取り入れることが望ましいとされています。8.4.2では前述の模倣品に関する要求事項のほか“顧客又は組織が材料を重大な運用リスクとして識別する場合”には、試験報告書の正確さの妥当性確認を行うことが求められています。

(8) 特殊工程
JIS Q 9100:2009年版まではISO 9001:2008の7.5.2 に注記が追加されていましたが、ISO 9001:2015では相応する細分箇条がなくなり、8.5.1 f) に集約されました。そのため、JIS Q 9100:2016規格としては、JIS Q 9100:2009 年版(すなわち、ISO 9001:2008)の7.5.2 に相応する箇所の要求事項を取戻し、追加しています。8.5.1.2(特殊工程の妥当性確認および管理)に係る活動は、例えば、熱処理、表面処理、溶接、複合材部品成形、非破壊検査等が相当します。

(9) 引渡し後の活動についての要求事項
JIS Q 9100:2009年版まではISO 9001 への追加要求事項として個別の細分箇条でしたが、ISO 9001:2015で8.5.5(引渡し後の活動)が新たに置かれたことを受け、8.5.5 に従来の航空、宇宙および防衛分野において重要視される、製品を引渡した後の顧客支援についての要求事項を追加し、統合しています。

なお、2009 年版において適用除外可否の懸念があったことを受けて、“引渡し後に問題が検出された場合の調査および報告を含む適切な処置”に関する要求事項は、8.5.5 の細分事項の外に出され、適用されることが明示されました。

(10) 人的要因(human factors)の取扱い
是正処置プロセスにおける不適合原因究明時に、該当する場合には必ず、人的要因(human factors)に関する原因を含むことが 9100 規格では追加要求されています。これによって、ISO 9001:2015 の8.5.1 で要求される“ヒューマンエラー防止のための処置”とうまく連携した仕組みで、ヒューマンエラー再発防止の対策を検討していくことも可能となります。

(11) 品質マニュアルおよび管理責任者に関する要求事項
4.4.2では、組織の品質マネジメントシステムに係わる文書化した情報について、一般的な要件が要求事項として規定されています。その要求事項を満たす文書化した情報を作成し、維持することが求められています。従来どおり、文書化した情報を一つの情報源にまとめ、品質マニュアルと呼ぶこともできます。

また、5.3では、管理責任者に関して同細分箇条a)〜e)の要求事項に関する監督(oversight)を行う責任および権限をもつことが明確化されています。

2. 9100:2016 改正版への移行


JIS Q 9100:2016規格は、JIS Q 9001:2015の新しい箇条の構造および内容を取り入れるために改正されました。JIS Q 9100:2016改正版への移行期限は、ISO 9001:2015改正版と同じ2018年9月です。
規格移行に関する動向は次のようになっています。

2015年 9月 ISO 9001:2015 改正版の発行
2016年 9月 JIS Q 9100:2016 改正版の発行
2016年10月 SJAC 9101 F 改正版の発行〔注記:審査要求事項の規格〕
2016年12月 JAB 認定移行審査の開始
2017年 4月 ビューローベリタスジャパンによる JIS Q 9100:2016 改正版への移行審査の開始
2017年 6月 JIS Q 9100:2016 改正版への移行審査必須化
2018年 6月 移行審査の受審期限
2018年 9月 移行期限(審査後処理・認証書発行・OASISデータベース登録期限)


 

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