審査員コラム
「効果の上がるISOマネジメントにするために−人間をもっとよく理解しよう−」連載第6回(最終回)

ISO9001/ISO14001 主任審査員 寺澤 壯一郎

2014/9/12up

ISO審査員として数多くの審査を担当してきた中で、マネジメントシステムそのものの運用に問題は無いものの、もう一工夫として「人」に注目するとより導入効果を得られるのにな、と感じる組織に接する機会が何度かありました。
本連載の第1〜4回では、マネジメントシステム及びパフォーマンスの改善に繋がると考えられる行動科学のコンセプトを、そして後半の第5回及び第6回(最終回)では、行動科学を絡めながら、筆者のISO審査経験をベースに、組織内で見過ごされがちな課題、仕事の質を向上させる上で障壁となっている問題の改善につながるヒントをご紹介しています。(毎週金曜日掲載)

どんな仕事でも、自分が支配している限りは愉快であり、自分が服従している限りは不愉快だ。
電車の運転手は、バスの運転手に比べると幸福ではない。
アラン(幸福論)


(3)ISOマネジメントの運用効果を上げるために
ISO審査を担当していて驚くのは、組織経営とISOマネジメントは別物だと誤解している方が比較的多いことです。ISO9001にしろISO14001にしろ、マネジメントシステムの運用効果を上げ、継続的改善を実現することが期待されています。効果を上げるためには、経営者が先頭に立ってリーダーシップを発揮しなければならないのですが、実態は管理責任者以下の人々に任せきりにしているケースを目の当たりにすることが少なくありません。これは組織経営とISOマネジメントというダブルスタンダードが単一組織に存在する結果を招いてしまいます。つまり、組織経営として必要な本来の業務の他にISOマネジメントのための業務を行っているわけです。ISO規格には「ISOマネジメントのための業務」という考えに基づく要求事項は存在しません。一刻も早くダブルスタンダード状態を解消することが望ましいと思われます。
一方、ISOマネジメントの運用効果を上げている組織の経営者は、目標設定に積極的に関与しています。品質や環境方針を策定する際には、「関係者が目標を設定しやすいかどうか」を念頭に、「ISOマネジメントを活用して、どのような組織にしたいか」を自分の想いとして明確に示し、さらに組織の課題の中でも特に改善を急ぐ必要がある問題を提示しています。また目標達成率が高い組織では、各部門で目標を設定する際に「なぜその目標を達成する必要があるのか」という点について、トップダウン方式ではなく関係者が充分に納得できるようにコミュニケーションを図っています。目標設定過程が関係者の動機づけの場にならなければ、良い目標設定とはいえないのです。
私は、実際の審査時に適切な目標設定がなされていないと思われた場合、関係者の気づきを促すべく、データ分析結果を参照しながら「経営者はこの部門に何を期待していますか」、「この部門の問題点は何ですか」などの質問を投げかけます。「仕事の質をより向上させる上で障壁となっている問題」に気づいていないと思われる場合は、気づきにつながるような他組織の実例を伝えることもあります。また、審査員としてとらえた組織の強み・弱みは、トップインタビューの場でお伝えしています。組織の強み・弱みを充分把握した上でなければ経営者とディスカッションができませんので、トップインタビューは審査の最後に行うことを原則としており、充分に準備をした上でトップインタビューに臨むように心がけています。
最後に、「ISOマネジメントは、経営者がその本質を理解して運用すれば、組織経営の改善に充分貢献できる」ということを強調して連載を終えたいと思います。ISO9001の要求事項では、「顧客重視」、「リーダーシップ」、「人々の参画」、「プロセスアプローチ」、「継続的改善」、「意思決定への事実に基づくアプローチ」、「供給者との互恵関係」など、経営者が組織を適切に運営し組織のパフォーマンス改善を図るために必要な項目が、品質マネジメントの原則として考慮されているからです。ご紹介した行動科学者の「人間とマネジメント」に関する研究成果をヒントに「人間を中心とするISOマネジメント」についてご理解をより深め、パフォーマンスのさらなる改善につなげていただければ幸いです。

 

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