審査員コラム「ホテルで眠れない!」

ISO9001/ISO14001/TS16949 主任審査員 三浦 俊司

2014/9/19up

マネジメントシステムの基本的な考え方と相反するととらえられがちな「感性」は、
マネジメントシステムが要求する科学的手法、標準化、データ活用等を
より活かす上で必要ではないでしょうか。
ホテル暮らしが多い審査員生活を長年送りながら、いまだ「ホテルで眠れない!」という
悩みから開放されない筆者が、自身の悩みと絡めつつ考察します。


「ホテルで眠れない!」…私にとって、これが審査員生活を続ける上でのネックになっています。14年間も審査員を続けているのに!です。無論、どのホテルでも眠れないわけではなく、特定の条件下でその事象が発生します。
「特定の条件」とは「音」に関係しており、一定レベルの連続音が枕元で共鳴している環境において最も眠れないということがわかっています。
1年の約三分の一がホテル暮らしの審査員生活ですので、ホテルで眠れないのはつらいことであり、これまで私なりにいろいろ分析しそれなりの対策を講じてきました。しかし、眠る前にならないとわからない事象ですので、対策が有効でなくやはり眠れなかったという日が年に数回あります。

先日、地方での審査(4日間)のために、その町のビジネスホテルに4連泊しました。古いホテルでしたので眠りに対する不安があり、部屋に入ってすぐ「音」の確認を行いました。その際は特に問題が無く安心していましたが、就寝時に昼の「音」確認が甘かったことに気付かされました。室内で操作できない換気音が枕元で共鳴し、かなり大きな連続音になっていました。その夜は持参している対策品の一つである「耳栓」をし、明け方近くになって何とか眠ることができましたが、翌朝部屋の変更をお願いしました。
禁煙室が満室とのことで喫煙室に移りましたが、その部屋には蚊取り線香セットが置いてありました。喫煙室でしたので、臭い消しのつもりで蚊取り線香に火を付けてみましたが、この煙が眠気を誘発させるようで、その後の3日間はよく眠れました。枕元の共鳴が小さかったのでどちらが効いたのかわかりませんが、この煙は私にとって予期せぬ発見であったと言えます。

このような予期せぬ発見をする機会は、仕事の場でも多くあることかと思います。しかし、そうした事象に気付けば「発見」であり、気付かなければ、「何も無し」ということになります。そして、この「気付き」は、個人の「感性」によるところが多いと言えます。
しかしながら、「感性」は、「3K(『勘』と『経験』と『度胸』)」に繋がる表現として、「事実やデータに基づく管理」と「計画的で手順を踏んだ活動」が推進される品質マネジメントシステムではあまり好まれず、公に使いにくい言葉です。他のマネジメントシステムも同様と言えます。
品質マネジメントシステムでは、計画の遅れや仕事の失敗を「悪さ」として捉え、そうしたことを減らすために仕事の標準化やデータの活用等が進められていますので、標準外の手順・手法で仕事を進めづらいと言えます。競争力激化、スピード対応、コスト削減等を考慮すれば、これらは当然のことでしょうが、標準化の過程でチェックリスト等を過度に活用することで、個人の「感性」が封じ込められてしまう可能性があります。

仕事上の失敗や不具合は、通常業務と異なることを実施した場合(設備のメンテナンスや段取り替え等)や4M変更等の変化点に発生する場合が多いと考えられ、こうした事実は審査の場でも実感として捉えることができます。
変化点管理は、どのマネジメントシステムでも重視されており、私が審査において重点的に気を配っているプロセスの一つでもあります。特に重要なのは「微妙な変化点」であり、それに関係して「変化点を変化点であると気付く!」ことと考えます。
通常の「変化点」はマネジメントシステムのルールに従って提起され、計画的に処理されるはずですが、実際には、問題が発生してから初めて「変化点」であったと気付くという事象が多く見られます。それらの多くは「微妙な変化点」であり、その内の数件は、変化点管理のシステムにて早めに対応することで、問題発生を防止できたと思われるものもあります。審査を担当する中でこうした事例を数多く見てきました。「微妙な変化点」を早い段階で気付く、即ち「変化点を変化点であると気付く!」のは、品質マネジメントシステムでは好まれない「関係者の個人的な『感性』」によるところが多いと言えます。
「感性」的な内容や「3K」のうちの「勘」と「経験」といったものをマネジメントシステムに何らかの形で取り入れることができればより有効かと考えますが、これらはマネジメントシステムの基本である品質を中心においたものの見方・考え方と方向性が異なるところがありますので、やはり難しい課題かと思われます。

一方で、ISO/TS16949(自動車産業品質マネジメントシステムの国際規格)審査では、チェックリストの使用が禁止されています。これは、規格の条項に基づく審査を禁止し、プロセスアプローチに基づく審査を求めているからです。また、審査では審査員の判断力や経験から指摘される不適合を認めています。これは、審査員の「感性」を求めているとも言えましょう。

このように考えますと、一見マネジメントシステムの基本的な考え方と相反するととらえられがちな「感性」ですが、マネジメントシステムが要求する科学的手法、標準化、データ活用等をより活かすために、個人の「感性」をより一層高め、変化に対して敏感であることの必要性は決して低くないと言えるのではないでしょうか。
なお、「ホテルで眠れない!」という私の弱点は、もしかするとその場での「感性」が高すぎるのかもしれません。この場合の「感性」は、いろんなことを考えてしまうという悪さを引き出す「悪性・感性」かと思われます。この「感性」を低下させることで「どんなホテルでも眠れる!」ように体質転換を試みたいと思う今日この頃です。

 

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