審査員コラム「大切なチームワーク」ISO9001/ISO14001/OHSAS18001 主任審査員 吉野 定治2015/1/16up
![]() 金木駅の売店で「斜陽館」への行き方を尋ねると、そこに行くなら太宰が執筆した「斜陽館の離れ」を見てから行くようにと丁寧に道順を教えてくれた。その離れというのは、斜陽館から200メートル程駅寄りのところにあり、隣で呉服屋を営んでいた方が、最近観光用に整備して開放(有料)しているとのことであった。折角の紹介であったので行ってみると、こじんまりした応接室や、太宰が年間23編もの執筆を手掛けた6畳の書斎部屋などを案内してくれた。行ってみて不思議に感じたことは、机が1つあるだけのこの部屋でなぜ短期間に多くの小説を書くことができたか、であった。いろいろ話を聞くうちに、太宰が多くの弟子や仲間を家に呼んでは交流を深めていたことを知り、来訪者達の話が全て太宰の小説のネタになっていたことが推察された。 私は現在、「品質」、「環境」、そして「労働安全衛生」のマネジメントシステムの審査や内部監査員養成研修を担当している。その中で特に重要な点は「安全」ではないかと思っている。研修にはリスクアセスメントの手法による危険源の特定とその対応が含まれているが、リスクとして抽出されるのはほんの一部であり、事故が起こって初めて想定外との判断でリスクに加わることも少なくない。それぞれの作業現場で必要な安全を360度とすると、作業者が認識している安全は120度、作業スピードを上げる中では60度ぐらいに狭まる可能性もある。その中でどのように安全を確保するか、となると、自分の経験・体験だけでは対応できない部分が数多く出てくる。 東京大学教授の中尾政之氏は著書「なぜかミスをしない人の思考法」の中で、その基本は「他人に学ぶ」ことであると述べていた。絶対ミスをしないと考えていても、人間が行うことである以上何らかのミスは起こり得る。しかし、これを防ぐためのヒントはここにあると言うのである。 頭では理解していても、常に360度の注意の下に作業をすることは難しい。しかし、そんな中にあっても、人と人とのつながりが保たれた良質なチームワークの中にこそ確かな安全が生まれるのではないだろうか。ビューローベリタスの内部監査員研修のテキストでは、「監査員と被監査者は一つのチーム」と説明している。各組織の関係する皆さんにも、ぜひ、そんなチームの一員であるという認識を深めて頂ければ、と願っている。 |
|
|
© Bureau Veritas Japan