審査員コラム
認証範囲について<その2>認証対象(適用範囲)の決定
テクニカル部 主任審査員 林重樹
2017/8/9up
今回は、ISO9001やISO14001のどの範囲を認証対象としているか、また、その認証対象が妥当なものであるかについて、マネジメントシステムを構成する組織との関係からお話します。
ご存知のように認証書にはその組織の認証対象業務が書かれています。
自動車製造会社であれば、「自動車の開発、設計、製造」というような表記が認証書にされています。この例だと非常に分かりやすく、一般の方が見ても何の違和感もありませんし、誤解も生じません。
しかし、もしこの自動車会社のメイン業務である開発、設計、製造を認証対象から外し、総務や生産管理部門だけを認証対象にしたとしましょう。
その場合、認証書の表記は「自動車の開発、設計、製造に関する労務管理と生産指示」など、一般の方から見て、この会社が何をしているのか分かりにくい表現にならざるを得ません。また、自動車会社と言っても、総務や生産管理部門なので、どういう専門性が必要かも分かりません。
さらにISO9001の要求事項を、すべて無理矢理、総務や生産管理部門だけの業務に当てはめなければなりません。
元々、設計も製造もしていない部門に、ISOの全要求事項を当てはめるのですから、無理な仕組みや、無駄な記録が多く出てくることになるでしょう。
購買や営業機能なども、無理やり当てはめることになりかねません。
この結果、通常の業務を普通にこなしていればよいはずなのに、不適切な範囲で認証対象を区切ってしまったせいで、会社の中に多くの無駄が生じることになります。
このケースの場合、会社組織全体を認証対象にすれば、無理な仕組みや無駄な記録はまず生じません。
現実には、地理的要因や規模の問題など様々な事情があり、会社組織全体を認証対象にするのは難しい場合もありますが、そのような場合はできるだけ組織の通常業務におけるインプット(営業など)とアウトプット(発送など)までを含めた範囲を認証対象とするのがベストと考えます。
なお、今回の事例のように、メインプロセスを外した認証範囲はISOの考え方から排除されつつあります。
それは認証業務の信頼性から言っても、メインプロセスを外すことはありえないでしょうし、このような事例を排除していくことで、誤解を生むような認証対象の表記も無くなり、何よりも2015年版に謳われる本業との統合に合致するからです。
ISOのシステムは、そのまま組織の通常業務とイコールであることがベストであるという認識が重要です。
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